就活:バイト経験のアピールは無意味?

確かに、としか言えない感じですね。

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なぜ就活生はバイト経験をアピールし、人事はそれを無視するのか

あなたは就職活動のとき、自分が学生時代にどんなアルバイトをしていたか懸命にアピールしませんでしたか? しかしある単純な理由により、企業は採用時にそれを重視しません。就活生と企業の間のギャップが10年たっても埋まらない訳とは……。

 先週のこのコラムで「バイト」という言葉を何度もタイプしながら、私は書棚に入っているある本のことを思い出していました。それは『東京大学学生アルバイト10年史』という冊子です。東京大学「学生アルバイト委員会」なる組織が、1959年に編集発行した非売品。

 序言には、戦後の混乱期、無秩序に行われつつあった学生アルバイトに秩序と統一とを与え、学生アルバイトの斡旋を組織化した日本初の試みであると誇りながら、その記録を残さねばと本にしたと書いてあります。戦後におけるわが国社会生活の学生からみた一断面での記録でもある(本文序言より引用)と書かれている通り、中身もとても興味深いものです。

 例えば、経済学者で東大総長でもあった矢内原忠雄は、この本の中で「バイト」という言葉を初めて聞いて驚いたと書いています。この本を注意深く読んでみると、学生アルバイトと書かれてはいても、バイトとは書かれていません。1959年当時、バイトという話し言葉は既に存在していたけれど、書き言葉としてはいまだふさわしくない状況だったのかもしれない、などと想像しながら読み進めると、あっという間に夜更けになってしまう、そんな本なのです(私が面白がりすぎなのかもしれませんが)。

学生アルバイトは学業の妨げになってはならない

 当時の学生アルバイトについて、ある教授は「学業や研究の増進に奉仕するならばいいし、それが学生アルバイトの適職ではないか」と述べています。生活のためにアルバイトをすることは仕方ないが、本来なら学生の本分である学業の延長線上にある仕事を学生アルバイトとしてやるべきだし、それが斡旋されるべきだと。ただ、それはなかなか難しいと書いてある通り、54年たった現在でも、学生アルバイトは、学業の増進になるものにはなっていません。

 一方、学生の立場で学生アルバイト委員会に参加していた人は「通常の就職でさえ高倍率なのにアルバイトにありつくなんて無理だった」とこぼしながら回顧しています。現代は、「正社員の仕事はない、バイトだったらある」という世の中ですが、どうやらこの時代(この方の記述では1952年当時)には、今とは全く逆だったようです。家庭教師は花形で「アルバイト貴族」と称されるほどだけど、ほかの仕事はサッパリ。引っ越しの手伝い、夜警、野球場の売り子など、いろいろと仕事は舞い込んでくるが、質も量も学生生活との両立が成立しない……と、ボヤキは続きます。

 結果、米国帰りの先輩の意見(この意見もかなり面白いのですが、ここでは割愛)を参考にして、彼は一般の労働者と競合しない分野に目を向けようと試み、「ふすまの張り替え」という仕事に着目します。理由は“家庭の中の労働は、当時換金化されていなかったし、企業との競合もないだろうから始めた”。スケールや実際の仕事はまるで違いますが、ニッチな部分に目をつけ、スタートアップしていくベンチャー企業と通底する部分があるなとか、タイムマシンがあれば当時の学生と会って、話をしてみたいと思わせる記述も、本書の中にはたくさん存在しています。

アルバイト経験は自己アピールの切り札だと就活生は考える

 さて、イマドキの学生のバイトの周辺のことに、話を進めていきましょう。バイトテロが世間では話題ですし、最近では「ブラックバイト」なる言葉も(これについては、いずれ稿を改めて言及する予定です)チラホラと耳にするようになってきました。就職もできない世の中なのに、学生アルバイトなんてあるわけがない、という昔とは打って変わって、今は就職できないからバイトをするというのが当たり前の時代。就活という観点から、とても面白いデータを見つけました。

 このデータは、株式会社リクルートキャリア・就職みらい研究所が発表している「就職白書2013」からの抜粋です。学生が面接などでアピールした項目としてトップになっているのは「アルバイト経験」です。「人柄」「所属クラブ・サークル」と続きますが、半数近くの学生が自分のアルバイト経験を、自らをアピールする要素として使っているのです。ところが、企業が採用基準として重視する項目に目を向けてみると、アルバイト経験はトップ3にも入っていません。「人柄」「自社への熱意」「今後の可能性」がダントツで、アルバイト経験は8位にランクインするのがやっと。「学部・学科」よりも順位が下です。

 ちなみに、手元にある自著(『就職のオキテ』)をひも解いてみると「就職白書2004」の中に掲載されていた同じデータを使って、この企業と学生のギャップについて言及しているページがあります。10年前のデータをみても、学生のアピール項目と、企業の重視した項目のトップ3は不変でした。パーセンテージも含めてほとんど変動がない。このことはいったいなにを意味しているのでしょうか。

人事がアルバイト経験を無視し続ける単純な理由

 かつてある就活生向けの情報誌を読んでいたとき、「アルバイト経験をアピールする学生をどう思いますか?」という学生からの質問に対して、有名企業の人事が「アルバイト経験は仕事にはまったく役に立ちません。そんな経験は捨ててもらっていいし、バイト感覚で仕事に就かれては迷惑だ」と話している記事を見たことがあります。それを読んで「この人、大丈夫なのかな」と、他人ごとながら私は心配してしまいました。なぜなら、それが就活生と人事の「アルバイト経験」における意識のギャップの正体だからです。

 企業の採用基準における重視項目をもう一度見てみましょう。最も多いのが「人柄」、次いで「自社への熱意」「今後の可能性」と続きます。就活生が1位と3位の項目に関して直接的に話をして、アピールするのはとても難しいことはお分かりでしょう。就活生に限らず、社会人でも、そうそう自分の人柄やポテンシャルを上手にPRできる人は少ないでしょう。そして、企業もそのことをよく知っています。だからこそ、就活生が話す「アルバイト経験」や「所属クラブ・サークル」の話に耳を傾け、その中から「人柄」や「今後の可能性」を見極めようとしているのです。

 「だったら、このデータにギャップはないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。しかしここには、見逃しがちな大きな落とし穴が存在します。

 就活生が「人柄」をアピールするために「アルバイト経験」について話をしたと自覚していれば、アピールした項目はアルバイト経験ではなく、人柄ということになります。しかし、アルバイト経験を通して人柄や可能性をアピールしているという自覚がない場合、アルバイト経験が評価されると思い、それをアピールするということになってしまいます。アルバイト経験の経験を評価して欲しいと話をされるのと、アルバイト経験を通して人柄やポテンシャルを測って欲しいと話すのは、似て非なるものであることは、ベテランビジネスパーソンなら自明の理ですよね。

 ささやかな話のような気がしますが、就活生が混乱に陥ってしまう原因というのは、その程度のことがキッカケでもあるのです。しかし何年経っても、そのギャップは解消されていない。その責任はどこにあるのか、少し考える必要がある時期に来ているのだろうと、連休中で普段よりアクセスが少ないタイミングなのに乗じて、コッソリと書いてみるのです。

ソース
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1309/23/news012.html